10月。里山には一足早く秋が訪れました。あれほど暑かった日々はどこへやら、吹き抜ける風も涼しくなり、山々は色づきはじめました。朝夕は寒く、その寒暖差で深い霧も出始めています。月ごとに2〜3回は更新して、季節の移り変わりを感じとってもらいたいと思います。

注:10月の写真集は、9月最終週と10月の第1週に撮影したものです。中旬、下旬の写真については、11月に入ってからアップします。
  また、撮影カメラが異なる場合があるため、写真の縦横比が16:9と、4:3のものがあります。


初旬

 棚田展望所より、松谷棚田を望む。

 9月最終週。早いところでは稲刈りが始まり、農村ではにわかに忙しくなってきま
 した。

 那良口から毎床へと道なりに進むと、左手にこの景色が見える棚田展望所に着きま
 す。

 春には、チューリップや菜の花が咲き
 夏には、水田に水が張ります。
 秋には、黄金色の稲穂が太陽に照らされて輝き
 冬には、雪化粧で白い階段が姿を現すこともあります。

 高低差130mにも及ぶ棚田です。「日本棚田百選」の一つ。




 田舎の体験交流館「さんがうら」

 松谷棚田の上段にあります。元は一勝地第二小学校でした。
 たくさんの人物を輩出してきた、135年の歴史を誇った学校です。

 10月初旬。水田では、稲穂が風に揺られています。
 6月に「田植え体験」で皆と植えた稲が大きく成長しました。
 中旬の「稲刈り・掛け干し」の体験を控え、静かにその日を待っています。

 後ろにそびえるのは「天狗山」。
 「三ヶ浦音頭」の中に出てくる山で、地域の方からも親しまれています。

 地域の方から愛されたこの学校は、閉校後、田舎の体験交流館「さんがうら」と
 なったあとも、多くの方に支えていただいています。




 松谷〜那良間より毎床地区を遠望

 季節ごとに様々な花が咲き、道行く人々を楽しませてくれます。
 そして、さわやかな秋晴れの日には美しいコントラストの風景が望めます。

 向かいに見えるのは毎床地区と、毎床棚田。梨のブランド地。
 「歳時記」でもたびたび紹介している場所です。

 地区と地区の間には、左から右へ那良川が流れています。

 空を見上げれば、広大な空が深い青に包まれています。
 その中の、一番深い青色の先、成層圏のさらに先にある大宇宙のロマンに想いを
 馳せることのできる場所でもあります。

 澄みきった夜空の、満天に輝く星空の大パノラマは、圧巻の一言です。





 那良川 〜恵みの川〜


 この地区に住む人々に、たくさんの恵みを与えてくれる川です。

 清らかで冷たい水は、生活用水や農業用水などに利用され、欠かすことのできない存在です。

 この川から水路が開かれ、三ヶ浦各地の棚田や畑に水が行き渡っています。

 また、ヤマメなど清流にしかいない魚たちも多く、釣り人が訪れることも。

 はるか昔より流れているこの川は、何度も流れを変えながら現在の姿になりました。

 この川の行く先は「球磨川」。

 日本3大急流の一つで、球磨川下りやラフティングで有名な九州第2の大河です。

 沢の音色や、小鳥のさえずり…。ざわざわと風に揺られる木々の話し声…。

 そこだけ時間が止まっているかのような、そんな気にさせてくれる、心が落ち着く川です。




 天狗山


 9月最終週の撮影。色づき始める直前の写真。
 天狗伝説の残る山で独特の形をしているのが特徴。

 急峻な山肌と、せり出した巨大な岩は、見る者を圧倒させます。

 広葉樹に覆われた山で、麓には那良川から取水された松谷の溝が流れています。

 この水が、松谷棚田の水田を潤し、美味しい棚田米を作ってくれるのです。

 階段が、山へと続いているかのような錯覚に陥ります。




 稲刈り直前の棚田


 この地に住んだ先人たちは努力を重ね、ついに水耕栽培を可能にさせました。

 那良川の水で栽培された稲は、山裾の棚田に黄金の絨毯となって広がり、人々の暮
 らしを豊かなものに変えました。

 しかし今は時代の流れにより、休耕田が多くなってきているのが現状です。

 現在は、たくさんの人々がこの美しい景観や水耕栽培の伝統を守るために、様々な
 工夫や努力をされています。




 松谷棚田と松谷阿蘇神社

 中央の小高い丘に神社があります。松谷阿蘇神社です。
 創建は江戸後期、三間社流造で村指定の文化財に指定されています。
 階段を登った先に鬱蒼と茂る木々に囲まれて、神様が祀られています。

 眼下の水田は稲刈りが始まり、掛け干しされた様子が見えます。

 この写真の奥に当施設があり、右手に「天狗山」がそびえています。

 6月の夜、この付近は幻想的な光に包まれます。
 その正体は「ホタル」。
 たくさんのホタルが、深い闇の中を乱舞する姿は妖しくも神秘的。

 思わずため息がでるほど、うっとりとする光景に出会えます。




 施設水田の畔道より


 秋の訪れを強く実感できる季節。10月の初旬。

 稲刈りが始まるころは、まだ大地には夏の風景が残っています。

 しかし、吹き抜ける風や流れゆく雲、虫の声などは変わり目を迎えます。

 夏と秋が同時に存在するこの時期。

 掛け干しされた稲たちは、風景に大きなアクセントをつけています。

 秋はもうすぐ。 さようなら、夏。また来年!!



中旬

         暮れゆく秋〜毎床地区


 見渡せば、ほぼ全ての田んぼが稲刈りを終えました。

 秋晴れの中、掛け干しされた稲たちが秋の暮れを感じさせます。

 もうこの季節になれば、朝霧も深く立ち込めるようになり、晴れた日には

 すっぽりとその中に包まれてしまします。

 白い霧が速度を上げながら流れ、晴れていく姿。

 それは、山深い里でしか味わえない素晴らしい光景です。








 一里山中腹より茂田地区を望む


 標高にして、580mほどの場所にある集落です。

 山を登っている途中に、ふいに現われる小さな平野。

 集落を流れる水は清く美しく、生活のための水はすべて自然の水を使っています。

 決して枯れることのない自然水と、豊かな大自然に囲まれた集落。

 天高く、雲が流れ、四季折々の姿が心を優しく包んでくれる里。

 失われつつある田舎の姿を現在に残す、まさに桃源郷です。





           毎床溝〜堰のほとりにて


 滔々と湛えられた水。三ヶ浦地区を潤してくれる那良川の水。

 ここから取水して流れていくのが「毎床溝」です。

 三ヶ浦地域の最奥、遠原地区のさらにその先に水源地があります。

 ここに来るには、毎床地区から俣口・遠原地区へと続く道を上っていき、

 途中で那良川へと降りて行きます。

 豊かな水量と、澄みきった水に感動を覚えます。







 白浜橋〜官営(国営)製材所の遺構


 毎床地区から俣口地区へと続く道の途中にポツンとある左岸へ渡る橋。

 欄干には、かつて稼働していたトロッコのレールが使用されている珍しい橋です。

 白浜官山(国有林)で伐採された木々は、トラックに乗せられ、この橋を通って

 搬送されていきました。白浜林道の起点。架設時期は、昭和29年12月。

 この橋の完成により、長い間活躍したトロッコはその役目を終えました。

 その後、数十年の時を経てトロッコ道はウオーキングコースとして整備され

 当時の面影を現代に伝えてくれています。




 遠原地蔵堂(遠原地区)


 三ヶ浦地域の最奥のある集落、遠原。その集落の中にこの地蔵堂があります。

 木造瓦葺き平屋建てで西の方角を向いており、間口・奥行きはともに、3m30p。

 中に石造りの地蔵菩薩座像が祀られています。 凝灰岩でできたお地蔵様です。

 唇には淡い紅色が塗られていて、総高は、64.0cm。像高53.0cm。

 お地蔵様の頭頂から顎までは15.0cm。肩張は30.0cm。膝張が31.5cmです。

 祭日は旧暦の8月24日で、地区の方々に慕われ、大切にされているお地蔵様です。

 傍にそびえる大きな木が長い歴史を感じさせます。

 遠原地区は、標高550m。那良川の水源に近い左岸側に位置しています。国見山(休火山・標高969m)の

 山腹斜面に位置し、川向の宮ノ尾山(標高877m)に挟まれた鹿児島県境の地域になります。

 火砕流や泥流、土石流を起源とする地形のため、高所にも関わらず比較的緩やかな斜面が特徴です。





 鵜口(うのくち)地区より、球磨川・渡方面を望む


 鵜川という球磨川の支流の最下流に位置する集落、鵜口。

 上流へ向かって高度差50m、距離2kmに渡って広がる谷底平野です。

 ここに来れば、急に視界が開け多数の集落が見えてきます。

 手前に映るのが鵜口地区。向かいは渡(わたり)という地域で、その間を日本3大

 急流の球磨川が流れています。写真右手の山は球磨太郎山(標高207m)。

 球磨川と鵜川。2つの川の恵みを受けられる、美しくのどかな地区です。






 大久保地区から人吉盆地を望む


 球磨村の絶景ポイントの中でも、人吉盆地を最も広く美しく見渡せる場所の一つ。

 それが大久保地区。市房山や白髪岳、上球磨の町までも見渡せる、正に絶景。

 晴天の、モヤがかかっていないときの光景は息をのむほどの美しさがあります。

 広がる雲海や、美しい日の出も見ることのできるこの地域は、鵜川から引いた水に

 よって多くの棚田を形成しています。球磨村だけではなく、四季、そして時間に

 よって変わりゆく人吉・球磨の姿を感じられる稀有な地区です。